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初がつお・上りがつお・戻りがつお

初がつお・上りがつお・戻りがつお

3月に入ると魚売り場で目にする「初ガツオ」の文字。上りガツオ・戻りカツオの違いや、江戸時代のお魚ランキングまでためになるカツオの知識がいっぱいです!

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上りがつおと戻りがつおの違い

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カツオは孵化してから「一生泳ぎ続ける」といわれる回遊魚ですが、その生態は「瀬付き群」と「回遊群」に分かれます。「瀬付き群」は南西諸島、伊豆・小笠原諸島周辺に生息し、「回遊群」はエサを追って南北あるいは東西に大回遊をおこないます。

回遊群の中でも、日本の近海では2つの系統がみられます。赤道付近から黒潮に乗り、南西諸島を経て、太平洋岸を北上する「黒潮系」と、南洋から小笠原・伊豆諸島を経て東北地方の海域にいたる「小笠原系」の群があります。

「黒潮系」のカツオは暖かい海に生まれ、1~3月頃に赤道付近、フィリピン沖から黒潮に乗って北上し、日本近海にやって来ます。
カツオは約19?23度の水温を好むため、2~3月にかけて九州沖を北上し、4月~5月頃に駿河湾沖でイワシなどを食べて大きくなります。6月~7月には東北地方の太平洋沖を北上します。8~9月には三陸沖から北海道沖に移動し、9月頃海温が下がってくるとUターンを始めます。そして10~11月にかけて高知県沖に再び戻ってきます。
このことから北上するカツオのことを「上りガツオ」、南下するかつおを「戻りガツオ」と呼んでいます。

「小笠原系」のカツオはミクロネシア海域から小笠原海域を北上し、夏頃に北海道に達して餌をたっぷり蓄え、初秋には再び越冬するために南下を始め、小笠原海域まで戻ります。

「初ガツオ」って何?

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「初ガツオ」とは本来、その年「初めて水揚げされ、市場に出されたカツオ」を意味します。したがって例年、日本の沿海にカツオがやってくる2月上旬頃に水揚げされたカツオのことを「初ガツオ」とよびます。ただ、最近では3月~6月に水揚げされる上りカツオのことを広く「初ガツオ」と呼ぶ傾向もあるようです。

この時期のカツオが珍重されるのは、「初物(はつもの)」を貴重なものとして尊ぶ江戸庶民の気質が源流となっています。初物を食べると福を呼び長寿に恵まれるという俗信があり、「初物七十五日」といって、初物を食べると寿命が75日伸びるという慣用句や、初物を好んで食べる人のことを指す「初物食い」などという言葉も存在します。特に「初鰹」は、「初鮭」「初茄子」「初茸」という江戸時代に言われた「初物四天王」の中でも一歩抜きんでた存在で、河竹黙阿弥の歌舞伎「髪結新三」などにも登場する初物界のスーパースターでした。

カツオは「足が早い=痛みやすい」と言われます。このため内陸部である京都などの山国が首都であった時代には貴人の口に入ることはありませんでした。江戸に幕府が定められて以降、鎌倉で獲れたカツオは江戸城にも献上されるようになりました。こうしてカツオを刺身にして和芥子で食べるようになり、庶民の間にも広まっていったものと考えられます。江戸という太平の時代が長く続いたことで経済や文化が成熟し、18世紀も後半になると「美味しいもの」や「珍しいもの」を良しとする風潮が生まれてきたのです。

寛文5年(1665)にはとうとう初物の売り買いを禁じたお触れが幕府から出されましたが、江戸っ子の初物ブームは衰えるところを知らず、特に「初鰹」のブームは天明・寛政年間(1781~1800)に最盛期を迎えます。有名な「目には青葉 山ほととぎす 初松魚(かつお)」の句は、1678年に刊行された句集にある山口素堂の俳句ですが、1800年前後に刊行された「誹風柳多留」には、この句への返歌として「目と耳は いいが口には 銭がいり」の川柳も登場しています。カツオを口にするのはお金がかかる、という江戸庶民の自慢半分の嘆きが聞こえてくるようですね。

上り・戻り、どちらがおいしい?

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カツオは春から夏にかけ、カツオは餌のイワシを追いながら黒潮にのって、太平洋沿岸を北上します。この時期のカツオはまだそれほど餌を食べておらず、初秋には金華山・三陸沖に達し、この海域で十分にエサを食べ、丸々と太ったところで南下を始めます。このため上りカツオは赤っぽく身が引き締まりあっさりした風味、戻りカツオは脂がたっぷりのってもっちりした味わいです。味わいはお好み次第ですが、脂の乗った戻りカツオのほうが生食するには美味しいとされ、脂肪の少ない上りかつおは主に鰹節などに加工されます。

ではなぜ、江戸時代にはそれほど初鰹が人気を集めたのでしょうか。鎌倉時代にはコイ、江戸時代にはタイが最も上等な魚とされていて、マグロなどの脂の乗った魚は下等な魚と言われていました。ちなみに、江戸時代のお魚番付によると、カツオは中等扱いでした。

江戸時代に初鰹が最上のものとして珍重されたのも、脂ののった戻りカツオより、上りカツオのほうがさっぱり好みの江戸っ子の口に合うためだったのでしょう。

まとめ

江戸時代と比較して流通が革命的に飛躍した現在、市場には日本全国から通年で食材が空輸されてきますので、「旬」の感覚は薄れているといえます。

それでも年が明けて築地市場で行われる「初競り」での高値落札のニュースはよく耳にしますね。まぐろ7240万円、さくらんぼ1粒3000円などなど、「初競りのご祝儀相場」と言われ、落札主が宣伝広告効果を狙ったものと考えられます。ただやはり、このニュースに人々の関心が集まるのは、人々の「初物好き」の気質が大きく影響しているといえるのではないでしょうか。

大量に出回って廉価になる上に美味しい、「旬」になる前の出始めの食べ物を「はしり」と呼びます。初物食いの是非はともかく、「旬」と「はしり」を区別する、この繊細な感覚は大切にしたいものですね。

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